一の絃を決めれば、あとは全部ついてきます
平調子は「一の絃を D に、次を G に」という表ではありません。一の絃をどこに置くかで、十三絃すべてがそのまま平行移動します。
箏には柱(じ)があります。糸巻きではなく、絃の下に立てる可動のブリッジです。 置く位置で有効な絃長が変わり、それが音の高さになります。 つまり調弦とは柱を並べる作業であって、 絶対的な高さの一覧を再現する作業ではありません。
D は例です。一の絃をどこに置いても、この音程の並びは変わりません。半音(一の絃のすぐ上)が入るのが、平調子を都節音階たらしめている特徴です。
平調子は「都節音階」です
平調子が使う音は五つ。一の絃から数えて、半音上・完全 4 度上・完全 5 度上・短 6 度上、そしてオクターブです。 西洋の音階名でいえば都節音階(陰旋法)にあたります。
| 一の絃から | 音程 | 一の絃を D としたとき |
|---|---|---|
| 0 | 基音 | D |
| +1 半音 | 短 2 度 | E♭ |
| +5 半音 | 完全 4 度 | G |
| +7 半音 | 完全 5 度 | A |
| +8 半音 | 短 6 度 | B♭ |
平調子のあの独特の響きは、基音のすぐ上に半音が来ることから 生まれています。長調にも短調にも聞こえないのはそのためで、 この半音の位置こそが平調子の身元です。
柱を立てる順番
- 一の絃を決めます。 曲と唄、そして楽器に合う高さへ。 ここでメーターは、決めた高さが何の音になったかを読むために使います。
- 五の絃、または中央付近の絃を先に置きます。 真ん中を決めてから両端へ広げる方が、柱の間隔が自然に揃います。
- 低い方から順に柱を立てていきます。 柱を動かすと隣の絃の張力も変わるので、一度に大きく動かさないでください。
- ひととおり終えたら、もう一周します。 十三本ぶんの力が乗り終わるまで、最初に置いた絃は落ち着きません。
よくある質問
一の絃は D に合わせるものではないのですか?
D は書くときの慣習としてよく使われますが、規格ではありません。 箏は唄や合奏の相手に合わせて全体を上げ下げします。合奏でなければ、 楽器と絃に無理のない張りに置くのがいちばんです。
絃の名前と音名がうまく結びつきません
結びつかなくて正しいのです。十三絃は低い方から 一・二・三・四・五・六・七・八・九・十・斗・為・巾 と位置で 呼ばれます。これは音名ではなく、どの絃かを指す名前です。 一の絃を動かせば、絃名はそのままで音名だけが全部変わります。
メーターが 1 オクターブ違う音を表示します
低い絃では、基音より倍音の方が大きく鳴ることがあります。柱と竜角の 中間あたりを弾き、爪が絃をこすらないようにしてください。 音名が合っていてオクターブ番号だけが違うなら、 音は合っていて読み取りがずれているだけです。全画面のチューナーなら、 一本を長く鳴らして表示が安定するかどうかも確かめられます。