調子は関係であって、音名の一覧ではありません
三味線の調弦を「一の糸は C、二の糸は F」という表として載せているページは、 いちばん大事なところを取り違えています。
本調子・二上り・三下りが決めているのは、三本の糸が互いにどう並ぶかだけです。絶対的な高さは決めません。 高さを決めるのは、唄う人の声であり、糸の太さであり、 棹の種類(細棹・中棹・太棹)です。同じ本調子が、地歌と津軽で まったく違う高さになります。
ですから手順は、ほかの弦楽器とは逆向きになります。まず一の糸を、その日その曲に合う高さへ置く。それからメーターで、 残り二本の関係を組み立てる。
C はあくまで例です。一の糸をどこに置いても、糸と糸の関係は変わりません。色のついた糸が、本調子から動かす糸です。
三つの調子が、実際に動かしているもの
| 調子 | 一の糸から見た関係 | 本調子から動く糸 |
|---|---|---|
| 本調子 | 完全 4 度 · 1 オクターブ | —(これが基準) |
| 二上り | 完全 5 度 · 1 オクターブ | 二の糸を全音上げる |
| 三下り | 完全 4 度 · 短 7 度 | 三の糸を全音下げる |
名前がそのまま操作を表しています。二上りは「二の糸を上げる」、三下りは「三の糸を下げる」。どちらも本調子からの差分として 名づけられていて、これも調子が関係の名前であることの証拠です。
合わせる順番
- 一の糸を決めます。 唄に合わせるならその高さ、独りで弾くなら 糸と棹に無理のない張りで。ここでメーターは「何の音になったか」を読むために使います。 目標を押しつけるためではありません。
- 二の糸を、一の糸との関係で合わせます。 本調子・三下りなら完全 4 度上、二上りなら完全 5 度上。
- 三の糸を合わせます。 本調子・二上りなら一の糸の 1 オクターブ上、 三下りならそこから全音下げた短 7 度。
- 一の糸に戻って確認します。 三本張り終えると棹にかかる力が変わり、 最初に合わせた糸が動いています。
よくある質問
結局、一の糸は何 Hz に合わせればいいのですか?
決まった答えはありません。それがこのページの主張です。唄い手がいるなら その声に、いないなら糸と棹に無理のない張りに。強いて出発点を挙げるなら、 細棹の長唄で B〜C、太棹の津軽ではもっと低いあたりが使われますが、 これは慣習であって規格ではありません。
糸巻きがすぐ緩みます
三味線の糸巻きは木の摩擦だけで止まっています。回すときに軸を穴の奥へ 押し込みながら回してください。押さずに回すと、手を離した瞬間に戻ります。 乾燥する季節に緩みやすくなるのも、同じ理由です。
チューナーを使うのは邪道ではありませんか?
三本の関係を組み立てるところまでは、耳でやるのが本来です。メーターが いちばん役に立つのはその先 — 合わせた関係を保つところと、自分の耳が取った 4 度や 5 度がどれだけ正確かを確かめるところです。決まった高さの音が出る楽器なら何でも読める全画面のチューナーも同じように使えます。